毎年5月22日になると暗号資産界隈では「ピザデー」を祝う人々がいます。暗号資産とピザという一見関係なさそうに見える二つはどう関わっているのでしょうか。この記事では、暗号資産の歴史に残る重要な日であるピザデーを解説します。
結論から言えば、ピザデーが暗号資産界隈にとって重要なのは、初めてビットコインによってモノが購入された日だからです。アイデアとしてのビットコインが誕生したのは2008年、実際にブロックチェーンとしてのビットコインが生成されたのは2009年でした。そして2010年5月22日に実際にビットコインでピザを購入するという実例が生じたわけです。
実際にビットコインでピザを買ったのはアメリカに住んでいたプログラマーのラズロー。ラズローはビットコインに関するネットフォーラムに10,000ビットコインをピザ2枚に交換してくれる人はいないか呼びかけました。ビットコイン草創期はネットフォーラムが暗号資産に関する情報交換において重要な役割を果たしており、ラズローはそこで呼びかければ誰かが応じてくれるのではないかと思ったのでしょう。
その呼びかけに応じたのがジェレミーでした。ジェレミーは当時ロンドンに住んでいた学生で、オンラインで見つけたピザ店でラズローのためにピザを注文します。もちろんこの時の注文はクレジットカードでしたが、ラズローはジェレミーにビットコインで支払ったということで、この日は「ビットコインで初めてモノを買った日」として位置付けられているわけです(なんと世界初のビットコイン取引所が登場する前のことです)。
当時のビットコインの価格はおよそ0.0041ドルでした。したがって、10,000ビットコインの価値はおよそ41ドル(当時のレートで4000円程度)となります。ピザ2枚の価格としては普通の値段だったと言えるのではないでしょうか。
この記事が書かれた2023年5月17日の1ビットコインはおよそ27000ドル。10000ビットコインだと2.7億ドル(記事執筆時のレートでおよそ370億円)ほどの価値を有します。今なら信じられないほどの数のピザが買えそうな金額ですね。
以下のTradingViewのチャートを見ると、特に2020年以降かなりの勢いでビットコインの価格が上がっていることがわかります。
暗号資産は投資目的で所有されることがまだまだ一般的で、日常的なサービスや物品に対する支払いにビットコインが使われるほどにはなっていません。とはいえ、少しずつビットコインの支払いを受け付けるお店は増えていて、例えば家電量販店のビックカメラではビットコインでの支払いを受け付けています。
暗号資産での支払いを広める障壁はいくつかありますが、その一つは暗号資産がどのような法的位置付けの不透明さです。しかし、ビットコインを法定通貨に位置付けることでその点を乗り越えようとしている国がすでにあります。それは、エルサルバドルと中央アフリカ共和国です。両国においてビットコインの導入はうまくいっていませんが、同様の動きがより経済的に安定している地域で起きれば、暗号資産でモノを当たり前に買う時代にまた一歩近づくと言えるでしょう。